受賞作品と記念品の展示場
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賞の授与
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お祝いに駆けつけて下さった黒鉄ヒロシ先生と
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受賞者記念撮影 |
自宅での記念撮影 |
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【受賞のことば】
諸田玲子
これまで賞とは縁がなかったので、とにかく嬉しいというのが正直な気持ちです。
最初に本を出していただいてから今年で七年目になりました。はじめはただ楽しんで書いていたものが、近頃ではひとつひとつ、今なぜこれを書くのかと自問自答しながら書くようになった、というのが一番の変化でしょうか。
『其の一日』は、家名や大義のために己を犠牲にした男たちの悲劇を、本人・妻・息子・恋人の視点で描いた短編集です。巷を騒がせている政治家の汚職事件を思い、亡き父を思い、あるいはあがいてもどうにもならない運命の残酷さを思い、私自身の身近な出来事を時代小説に置き換えました。それだけに切実な思いがこもっています。
四編とも本当は長編にしたい題材でした。バッサリ刈り込み、あえて一日という制約を課したのは、苦手な短編に真っ向から取り組んでみよう、そうすることで長編にも新たな発見があるのではないかと考えたからです。波瀾万丈のドラマが好きな私にはきついところもあって、自分で自分を叱咤して書いたもの、それだけに感慨もひとしおです。
もともと気が多いせいもありますが、ひとつのところに安住するのは嫌いです。時代小説ならではの空気を大切にして、でも既成の枠にはとらわれず、これからも新しいものにどんどん挑戦してゆきたいと思っています。
左から諸田玲子、原田康子氏、福井晴敏氏
吉川英治賞の贈呈式・披露祝賀会 2003年4月11日